なんてきれいなんだろう。ふと見上げた雲に、輝く夕日に、波打つ草花に、川面を吹き抜ける風に、心奪われるときがある。この感動を誰かに伝えることはできないかと、カメラを取り出し、ファインダーを覗きこむ。が、シャッターは切らない。

 違う、これじゃない・・・ いつもそう思う。

 感動を表現するのは難しい。その場面には前後関係が、そのときの心境が、それまでの経験がある。そのとき歌っていた鼻歌が重要だったりすることもある。うかつに言葉にしてしまうと、瞬く間に陳腐な思い出でしかなくなってしまいそうで、不安になる。
 言葉を駆使して、映像を見せて、感想を添えてその瞬間の場景をいくらことこまかに再現したとしても、その瞬間全身を駆け抜けた興奮を共有することは不可能に等しい。確かに伝わるのは、素晴らしい場面に出くわしたのだという事実でしかない。
 写真と出会うことで湧き起こる感動は、実際の場景に遭遇したときとは異なった新しい感動だと思う。その瞬間を共有しなかった人に、その人の知識と経験が、思い出が注ぎ込まれて想像される感動を喚起する。だからこそ、感動を伝える写真は感動を生む美しいものであってほしい。別のものだとしても、感動が共有できる。

 そして情景は、つくりこまれてゆく・・・

写真に残される「感動」の情景。いつもとっさに覗き込むファインダーには、それが見えない。この感動を、伝えたい・・・ 思いが先走る。

「メモの束 vol.4」掲載