第30回 自由学園美術工芸教育発表会、16から18日までの会期が終了しました。ご来場いただいたみなさん、ありがとうございました。会場の様子や報告はこちらでどうぞ(美術展facebookページ)→ (Click!) 

メインとなって指導にあたったのは、授業で取り組んだ中等科2年の木彫・うつわ、木彫・スツール。中等科3年から高等科3年までの各学年から1グループずつで制作した動物の合作4体。
男子部では美術、技術を通じて木工を基本にすえていることもあり、専門家の端くれとして指導にかかわらせていただいています。
せっかくの機会、より高い完成度を望みたいところではありましたが、時間数や設備の限られた中で善戦したのではないかと思います。作者である生徒たちが、多くの方に見てもらってどのような感想を抱いたか、今度聞いてみたいです。

展示にあたって寄せた、木工の授業についての考えを転載します。ここから今後どのように展開、また変化していくか。それをはかるための記録という意味でもあります。
教師ではないので、的を得ていないかもしれないという不安を抱きつつ、学校の外で活動している者として、できるだけ実践的な内容を取り入れていけたらと思っています。

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男子部・木工についての考え

 男子部では入学するとすぐに、在学中各自が教室で使用する机をつくります。スケジュールによっては、さらに教室で使う椅子も制作しています。材料には、高等科が育林活動を行っている、埼玉県名栗地区から伐りだされたものを用いています。そこでは山林・素材・使用目的の循環が成り立っており、美術の制作としてだけでなく、体験を通して自然環境や天然資源との関わりについて考察する貴重な機会になっていると考えられます。
 これらの活動は森林再生事業促進実行委員会主催・第2回 間伐材を生かした「森づくり・モノづくり コンテスト」での入賞、東京都提供・テレビ東京『すなっぷ』の取材など、社会に対して訴求力のあるテーマであり、実際、木工に期待して入学を志望する生徒がいることからも、男子部の魅力のひとつとして、大切なファクターになっているといえるでしょう。
 
 木工は、主に中等科の美術の中で取り組んでいます。中等科の3年間で、出会い、造形、構想、構成の体験を積み重ね、身近で親しみのある素材である木材の扱いを通じて、ものづくり全般に対する基本のプロセスを習得できたらと考えています。
 中等科1年生では、あらかじめある程度加工した部材を用意して、ものづくりの実際を体験するところからはじめています。素材の感触、香り、重さ。ものの成り立ち、構造、組み方。道具の種類、扱い、選び方を知るきっかけとなること。そして入学して間もない新入生にとっては、協力して作業する機会を設けることで、仲間としてのつながりを育むきっかけにもなっています。
 2年生では次のステップとして、ノコギリ、ノミ、カンナといった手道具を使った、木彫による造形に取り組みます。木材の特徴、木目であったり色味、堅さや重さといったことを肌で感じ、作品に活かしていけることを目指します。必ずしも機械が必要なわけではなく、自分の手で自由な造形ができることを知ることで、ものづくりの可能性を大きく広げることになります。材としては比較的柔らかく、彫りやすいものを選んでいますが、大きな塊から完成形をイメージし、もとの形が見えなくなるほどにまで彫り進むのは、根気のいる作業です。
 また、便利な道具も扱いを誤れば即ケガにつながるという緊張感、その反面、一見危険な刃物がまるで自分の手足のようになり、自由に彫刻できる面白さに気づくはずです。このようなノミによる本格的な彫刻は、今回の課題で、男子部では20年以上ぶりに取り組みました。全体として充実した内容になっていると思います。これはこのクラスの生徒の取り組みがよかったからに他なりません。
 そして中等科における木工のまとめとして、3年生では家具の設計製図の演習をします。つくりたいものがあり、そのイメージを実現するための大切な工程です。1、2年で材料のことと加工方法を学んできているので、それらを踏まえて材料を選び、工法を考え、工程が想定できるところまでできたらと考えています。
 実際に自分でつくる場合はもちろんですが、制作を他者に依頼する場面でも、ものづくりの現場で共通言語となる図面の基本となるのが三面図です。その読み方と、書き方。そして模型の制作。これらを演習を重ねて習得します。

 自分の作品には、どうしてもその労力と費やした時間に対して満足してしまいがちです。制作に対する姿勢はもちろん、自分の作品について、客観的な視点がもてるようになることが大切です。制作を進める中で、目指しているイメージに近づいているか、完成したものが果たして美しいものになるかを確認していける力を、課題を重ねるごとに培っていきたいと考えています。
 ものづくりは想像力です。どんなものがあったら楽しいか、心地よいか。それは何をどうすれば実現することができるか。発想と洞察、そして構成して実現できる自信を養っていきたいと思っています。

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(1)木彫・うつわ −あの人に贈りたいかたち−:2010年度・中等科2年・75回生
素材・クス
道具・ノコギリ、丸ノミ、木づち
時間・8時間(2時間×4回)
ねらい・課題の目標は、生活の道具である器をつくること。素材の表情を活かした造形をすること。目的をもって完成形をイメージすること。木理(もくり)や色、重量感や柔らかさといった素材の特徴を知ること。そして丸ノミ、木づち、ノコギリなどの道具の扱いを習得すること。このことを通して、ものづくりには必ずしも機械が必要ではなく、むしろ自らの手による加工の方が自在な造形ができることを発見する。

(2)木彫・スツール:2011年度・中等科2年・76回生
素材・座板:学園キャンパスの樹木/脚部:ケヤキ
道具・ノコギリ、丸ノミ、木づち/カンナ、玄能、ナイフ、木工用ボンド
時間・10時間(2時間×5回)
ねらい・目標は、生活の道具であるスツールをつくること。素材の表情を活かした造形をすること。目的をもって完成形をイメージすること。木理(もくり)や色、重量感や柔らかさといった素材の特徴を知ること。そしてノミ、カンナ、ノコギリなどの道具の扱いを習得し、刃物の研磨や道具の仕込みについて理解すること。このことを通して、ものづくりには必ずしも機械が必要ではなく、むしろ自らの手による加工の方が自在な造形ができることを発見する。

(3)スギの椅子:2008年度・中等科1年・74回生
素材・スギ(名栗)
道具・ノコギリ、金づち、さし金、クギ、木工用ボンド、紙やすり
時間・8時間(4時間×2回)
ねらい・スギ材を使う。各自自由に加工できる部分が欲しい。接合は木工用ボンドとクギ。4時間×2回の授業時間内で完成させる。準備には専任教師が1人であたる。自動送りカンナ盤(材を削り厚さを調整する機械)が故障していて使えない。これらの条件を前提として設計を行なっている。
 一般的に、西洋的な家具である椅子にスギを用いることは稀である。使うとなれば、かなり慎重な設計と細工が必要になる。準備時間および加工設備の整備と、制作時間の確保が必ずしも十分とはいえず、対応を改善する余地がある。そうすることで、自ずと設計も変わる。

(4)木工・家具設計製図演習 −イメージを実現するために−:中等科3年
素材・消しゴム、お菓子の箱、石膏幾何形態、家具
道具・筆記用具、定規、方眼紙/スチレンボード、カッター、定規、接着剤
時間・2時間×4回
ねらい・中等科3年では、計画から完成まで、工程全体を体験し把握することを目指している。ものづくりはニーズをくみ取るところからはじまるが、ここではニーズに対してかたちを与える重要な工程である設計に取り組む。自分でつくるときも、制作を他者に依頼するにしても、設計に無理があれば実現できず、また製図が整っていなければ意思の疎通がはかれない。ものづくりの現場で共通言語となる製図法の基本を知り、実践することでイメージをかたちにする手段を身につける。

(5)動物:中等科3年、高等科
素材・角材(スギ)
道具・ノコギリ、ドリルドライバ、ビス、メジャー
時間・10時間
ねらい・直線的な要素をもつ角材を用いて、やわらかな、動きのある動物を表現しようという取り組み。共同でひとつのかたちをつくりあげる過程で、大地に生きるものの力強さ、美しいフォルムの神秘性を共有し、もののかたちと構造の面白さを体感する。木の感触や香りを味わう、もののかたちと成り立ちをよく見る、そして三次元でイメージしながら造形することから、観察する目と、ものには重量があり、立体として存在していることを理解する。
兄で陶芸家の望月薫が、青山の桃林堂画廊でグループ展をしています。
ぜひお立ち寄りください。

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参陶空間展 vol.8 (Click!) 
平 厚史・増田良平・望月 薫

2012年11月20日(火) - 11月25日(日)
10:00 - 19:00

桃林堂
東京都港区北青山3-6-12 青山富士ビル1F
phone. 03-3400-8703
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