この話にはつづきがある。
滑りたくてしょうがない少年は、いっこうに降りる気配がない。母は当然、語気を強める。
「死んじゃったらどうするの。みんなが困るからやめなさい」
すると子どもが答える。
「死んじゃってもいいもん」
どきっとする。口先だけのことだとはわかっていても、子どもの口から「死」なんて恐ろしい言葉が容易く出てくることに驚き、親子の会話の中でこの言葉があまりにも平然と交わされることが、異様に思えた。
初めて死んだ人に接したのは小学校一年のときだった。夜中に叩き起こされ、眠い目をこすりながら遠くの町まで出かけた。病院のベッドで横になっていたのは祖父。しばらく前から病気で入院していたのは知っていた。しかし人が死ぬということが、まったくわかっていなかった。目の前で息を引き取った祖父と、嘆き悲しむ親族たち。ただただ恐ろしかった。
生気を失ってしまった祖父の体に触ることはできなかった。触ったら、よくわからない「死」というものが乗り移ってきてしまうのではないかと、緊張した。その悲しい記憶が、今でもはっきり残っている。だから「死ぬ」なんて、そう簡単には口にできない。
もう半月ほどしたら、あまりにも早くに命を落とした後輩の命日がくる。人の死がもたらす悲しみは、”みんなが困るから”なんて生易しいものではない。わんぱくでいい。たくましく、生きてほしい。
滑りたくてしょうがない少年は、いっこうに降りる気配がない。母は当然、語気を強める。
「死んじゃったらどうするの。みんなが困るからやめなさい」
すると子どもが答える。
「死んじゃってもいいもん」
どきっとする。口先だけのことだとはわかっていても、子どもの口から「死」なんて恐ろしい言葉が容易く出てくることに驚き、親子の会話の中でこの言葉があまりにも平然と交わされることが、異様に思えた。
初めて死んだ人に接したのは小学校一年のときだった。夜中に叩き起こされ、眠い目をこすりながら遠くの町まで出かけた。病院のベッドで横になっていたのは祖父。しばらく前から病気で入院していたのは知っていた。しかし人が死ぬということが、まったくわかっていなかった。目の前で息を引き取った祖父と、嘆き悲しむ親族たち。ただただ恐ろしかった。
生気を失ってしまった祖父の体に触ることはできなかった。触ったら、よくわからない「死」というものが乗り移ってきてしまうのではないかと、緊張した。その悲しい記憶が、今でもはっきり残っている。だから「死ぬ」なんて、そう簡単には口にできない。
もう半月ほどしたら、あまりにも早くに命を落とした後輩の命日がくる。人の死がもたらす悲しみは、”みんなが困るから”なんて生易しいものではない。わんぱくでいい。たくましく、生きてほしい。