愛ある年に

日本漢字能力検定協会の公募によって決まった今年の漢字http://www.kanken.or.jp/kanji/kanji2005/kanji.htmlは、「愛」だった。例年、暗いイメージをもつ字がつづいていた中で、今年選ばれた漢字は、文字そのもののもつ印象はきわめて美しい。しかし今年一年の世相と重ねあわせて考えてみると、愛があったというわけではなく、そこには愛を希求する、切実な思いも伝わってくる。
この国の人はこんなにオープンだったかなぁ、と思うことがよくあった。ともすれば意識して抑えようとしていたかのようにさえ見えていた愛するということを、言葉にし、映像にし、積極的にアピールするようになった。愛を声高に唱える歌が数多く歌われ、多くの人が共感する。今までは身近なテーマのひとつである恋愛が中心だったが、今やその領域を越え、家族愛、人類愛、平和への希望と、深まっているように思う。
多くの人が平和を望んでいるであろう社会の中で、愚かなこと、残念なこと、悔しいことは絶えることがない。シンボルとして「自由・平等・博愛」を掲げる国でも、理不尽な暴動が起きた。原因は単純ではないだろう。幸せに生きていたいという、誰もが抱いているささやかな希望が叶わない現実が、それぞれの立場の前にのしかかっている。既に人類の力ではどうしようもない、極みに達しているのではないかという失望感すら漂う中で支持された今年の字に、答えを見いだそうとしている社会の流れが向かっているように感じる。
言葉だけではない、生きた愛を、人々の間で育んでいられる時代を迎えたい。